Hawaiian Photo & Essay, Hoʻomanaʻo
エンジェルス トランペットの花は日本でもこの20年ぐらいの間で一般的になり、日常の中でもよく見掛けるようになったと思います。
英名では、Angels Trumpet Flower / エンジェルス トランペット フラワーですが、正式な学名はブルグマンシアと言い、その種類は豊富で、色々な色や形が有りバリエーションに富んでいて、ガーデニングのポイントとしてフェンスや壁際に植えられているのを時折り目にする様になりました。
木立朝鮮朝顔(キダチチョウセン アサガオ)科に属する近縁種の為、そのまま「キダチチョウセンアサガオ」と呼ばれる事も度々ありますが、実際にはキダ仲間であるけれど種類自体は違う植物なので本来「正式な和名」が不明確です。
然しながら、あまり知名度は高くはないですが別名で曼荼羅華(まんだらけ)と呼ばれる事が有ります。
この曼陀羅華について、触れてゆく事に致しましょう。
エンジェルス・トランペットの別名、曼陀羅華。
曼陀羅華は「天界の花」とされていて「神に仕える花」とも呼ばれる事から、天空からまるで天女のように地上に舞い降りて来て、美しい色や形と素晴らしい芳香で人を魅了し喜びと幸せを届ける花と言われています。
曼陀羅華の曼陀羅(マンダラ)とは仏教用語でも天華(テンゲ)、つまり天界に咲く花そのものを意味していているのだとか。
この曼陀羅華と言う名前の語源はサンスクリット語に由来し音写したと考えられているのが有力のようです。
美しさだけでなく神々しさを感じますね。
さて。
このエンジェルス・トランペットの花。
ハワイアンキルトではとても昔から馴染みが深く、キルターにとって人気のあるモチーフの一つにあげられます。
先程の曼陀羅華の話しと同じようにハワイアンキルターの間でもロマンティックな言い伝えが有りますよ。
英名のAngels Trumpet、つまり『天使のトランペット』に因んで言い伝えられたのだと存じますが、小さな天使たちが美しい羽を羽ばたかせ、夜明け間近に舞い降りる。
夢を見て眠る人たちの耳元で優しく、トランペットを奏で夜明けの訪れをそっと告げてゆく、と言ったベッド・ストーリーが語られています。
このロマンティックな話しに加え、実際のエンジェルス・トランペットの花は色、形も全てが美しい花ですから、キルター達がこぞって縫ってみたいと言う程、人気があるのもうなづけますね。
そんな魅力的な花ですが、実は別のもう一面の顔を持っています。
曼陀羅華、つまりエンジェルス・トランペットの花にはアルカロイド系の強い毒性を持っていることをご存知でしょうか。
これと同じく、先程も綴ったようにエンジェルス・トランペットの近縁種であるキダチチョウセン・アサガオ。
このキダチチョウセン アサガオも同様に非常に強い毒性を持ったアルカロイドの成分が多く含まれています。
近縁種のキダチチョウセン・アサガオはアルカロイドが多量に含まれる事から、エンジェルス トランペットよりも猛毒とされていますが、昔から『毒は毒にも薬にもなる』と言う言葉がある通り、大昔には麻酔薬の実験薬として使用されていました。
1800年代初頭、アメリカで初めて使用された麻酔よりも更に40数年も前に遡ります。
キダチチョウセン アサガオの毒性物質のアルカロイド成分を使い、乳癌摘出手術に用いる麻酔薬として人体実験を成功させました。
麻酔実験を兼ねたその手術は、のちに幾度となく繰り返し行われて、全ての手術に成功し医学界において、人類の救世主や希望の光のような存在になった事は先ず間違いない事でしょう。
英名では天使の名前を持ち、和名では天界の花とされ、そして、美しい容姿とは真逆に強い毒性を持つ花、
英名と和名ではいずれも天界を意味する花ですが、では、ハワイ語ではどのような意味を持っているか、お話しを続ける事に致しましょう。
ハワイ語でエンジェルス トランペットの花は、『Nānā Honua (ナーナー ホヌア)』と言います。
Nānāは良く見る、しっかりきちんと見る、直視する、見据えると言うような意味が有ります。
チラリと見た、チラリと見る、と言うのではなく、しっかりジッと見る、とてもよく見ている、観察していると言ったニュアンスです。
『Honua(ホヌア)』は、大地、地球、ベースメント、足元、基盤、基礎などを意味しますよ。
『Nānā Honua (ナーナー ホヌア)』
つまり、『しっかりと大地を見て咲く花』と言う意味なんです。
エンジェルス トランペットの花は下向きに咲きます。
この様子を見てハワイの人たちは自分の足元、地を見て根を張る花』と名付けました。
こう書くと、天女や天使、天界の花、などと言うロマンティックな夢見よりもハワイアンの人たちはとても現実的な見方をしているのが伺えて面白いですね。
エンジェルス トランペットの花は夜の花でも有ります。
勿論、日中お昼間にも咲いているのですが、夕方ー夜になると明け方までムスクのような甘い香りを放ちます。
小さな蝶よりも蛾などの昆虫やコウモリなど、羽も身体も大きく、より遠くまで飛んでゆける夜型の生物達に受粉を促して貰おう工夫を凝らしているから。
昼は何となく青っぽいような匂いがする、エンジェルス トランペットの花も夕闇に迫る頃になると、辺り一面がふんわりと良い香りがするのはそのせいです。
ハワイでは通年、観ることが出来ますが日本での開花時期は大体5月頃に始まります。
温かいと言うよりは初夏を感じるような日差しが高く少し汗ばむぐらいの季節から、11月初旬ぐらいまで。
非常に丈夫でも有る為、日本のように四季がある国でも長く楽しむ事が出来ます。
天界の花、夕闇に咲く花、
天使のトランペット、
そして、毒性と薬効。
エンジェルス トランペットは様々な表情を持っていますね。
今回のHawaiian Photo & Essay “Hoʻō manaʻo”(ハワイアン フォト&エッセイ ホオマナオ)、エンジェルス トランペットの花をお届けしました。
如何でしたでしょうか。
更新を楽しみにして下さった方々、間が空いてしまってごめんなさい。
また、近くお会いしましょう!
それではまた。
A hui hou kākou!
Aloha ane mahalo.