Hawaiian Photo & Essay, Hoʻomanaʻo
今回はハワイとアンスリウムの繋がり、
アンスリウムの花についてコラムをお届けします。
アンスリウムの原産は南米コロンビアです。
ハワイには船で持ち込まれました。
ハワイの財務大臣が苗を持ち帰った事が始まりです。
アンスリウムの苗はコロンビアからヨーロッパに渡り、ハワイから諸用でロンドンへ訪れていた時に渡航先のロンドンで初めてアンスリウムの花を目にしました。
「何と不思議でもあり、そして魅力的な花なんだろう」と、
きっとそんな風に目を奪われた事でしょう。
そののち、アンスリウムの花々は大切に育てられたものの、次々に枯れてしまいました。
日立のCMの「この〜木、何の木、気になる気になる、みんなが気になる木ですから」の歌でお馴染みのCMソングで有名なモアナルア・ガーデンで栽培もしました。
然し、オアフ島での普及はありませんでした。
1900年初頭、のちにハワイ島に移植した事が始まりで、そこから大凡100年近くが経過し、長い歴史の中で、ハワイ島に住む日系人を中心にアンスリウムの栽培改良がされて来ました。
今日ではハワイの島々のみならず、世界へと輸出するようになりました。
さて、話しを当時に戻しましょう。
植物は環境の変化に過敏に反応します。
残り少なくなった苗を受け継ぎ、託され、更にまた別へと託されたり、その後ガーデナーの方のみならず、農業を営む方にもハワイの地で合うようにと交配や品種改良がされて来ましたが、最初は増えては枯れを繰り返し、まさに試行錯誤が続きました。
当時はハワイ島のAmaulu地区や、Hilo地区での品種改良や栽培が盛んでしたので、これによりAmauluやAmaulu Redと総称して呼んでいました。
Amaulu Redが少しずつ定着して来たと思った頃、戦争の暗雲が立ち込めます。
時同じくしてPahoa地区で農業を営んでいた農夫の方が、このAmaulu Redを譲り受けましたが当時は未だ改良の余地も多く、完成度としては不十分であった為、環境に合わず、瞬く間にその数は激減し、結局最終的に残ったのはたったの1本だけとなりました。
その後、丹念に育てられ、たった1本になってしまったアンスリウムは日に日に元気を取り戻し、しっかりと根を張ります。
一苗だったアンスリウムは、ゆっくりと時間を掛け、株を増やしました。
そのAmaulu Redを元に今度は強くて丈夫な苗に育てようと努力が続きます。
美しい花を咲かせる為に、
病気のリスクを減らす為、
賢明な品種改良が続けられました。
その絶え間ない努力と愛情から、Pahoa地区で病気や環境の変化や害虫にも強い、そして戦争も生き延びたアンスリウムからハワイのオリジナル品種1号が誕生します。
そうなんです。
たった1本の苗から生まれたアンスリウムでした。
品種改良して、ようやく本来の美しいヴェールを身に纏ったアンスリウム、真紅色をしたそのアンスリウムの花は『Ozaki Red』と言う名前が付けられました。
Amaulu Redを譲り受けた背景ですが氏の同郷でもあり、また恩師であったことから、親愛と親しみを込めて恩師の名前が付けられました。
今日ではアンスリウムの花々は世界に出荷されるぐらいハワイ島では専門農家さんも多く、園芸家や農家さんの努力もあって、品種も多くなりました。
オーキッド(蘭の花)に続き、栽培量、輸出の出荷量、そして品種量も恐らく世界一だと思います。
より華やかで大輪のアンスリウムや変わった色、形をしたアンスリウムが1番の人気では有りますが、私はアンスリウムと言えば、やはりこのクラシックな『Ozaki Red』が一番美しいと思います。
陽気なハワイアンの人達には芸術的な美しいアンスリウムの花も、何故かおどろおどろしいお化けに見えてしまうようで、トロピカルなアンスリウムの花をそのまま『Obake』と呼んでいます。
ハワイアンは日系人や日本人との関わりが多い歴史を持っていますがアメリカ合衆国の51番目の州でもあります。
その為、余談ですが『ピジン・イングリッシュ』と呼ばれる俗語で、「英語」「ハワイ語」「日本語」をミックスした言葉がハワイで生まれました。
ハワイのピジン・イングリッシュは独特な癖の強いイントネーションなので私はこの発音を聞き取るのはとても困難で苦手です。
それでもたまに日本で姿見えずともこの発音を聞いただけでピジンを喋るハワイのロコ達だと直ぐに分かる程。
思わず
「ハワイに住んでいらっしゃいますね」と聞いてしまいたくなります。
(笑)
ハワイのピジン・イングリッシュはハワイに住む欧米人以外のハワイアンや日系人などローカルの間で繁盛に使われている日常言語の一つです。
この為、お化けは英語の「Ghost」とは言いません。
日本語をカタカナ読みするような和製英語風に「Obake」と呼ばれていますよ。
そんな事から、この名前が定着し、この呼び方のお化けに因んで品種名で本当に「Obake」と名付けられたアンスリウムもあります。
嘘のようなネーミングではありますが勿論、日本のみならず世界へ輸出する時も「Obake」として売りに出し、購入側はオーダーする側も「Obake」として買い求めています。
ちなみに「Obake」はお化けを連想するように、このアンスリウムの品種はやたらに大きい。
ゆらゆら、ヒラヒラしていて風に揺らされなくても持っただけで無駄に揺れ動きます。
(笑)
ゆらゆらヒラヒラさせたのも物凄く大きなサイズにしたのもネーミング通りアンスリウムにお化け感を出す為だったのでしょう。
わざわざ、そんな容姿に見えるようになるまで品種改良までさせて「Obake」とまで名付けてしまうのですから面白いですね。
農家さんの遊び心が伺えます。
一方アメリカ本土では正式学名とは異なりますが、アンスリウムの事を「Boy's Flower」と呼ぶことも。
ハワイアン フォト&エッセイのコラムの中なので公の場であまり文中には書きたくないのですが、アメリカ人にとっては男の子のシンボルのように見える事から比喩して、しばしばこのように呼ばれる事もあり、流通業界では「Obake」と同じように通じたり流通するのだとか。
この影響からなのか、ハワイでもたまに「Kānē」と呼ばれる事も。
ハワイ語の「Kānē」は英語の「Men」。
つまり男性と言う意味です。
Kahakōと呼ばれる記号が付くので、Kane(カネ)では無く、
カーネーと発音します。
ハワイアン達は「Kaona」と言ってハワイ語の歌などに度々、隠語を用います。
「Kānē」と呼ぶのは隠語であって、そうした昔からの風習が関係しています。
どうですか?
植物一つから見ても実は奥が深く、ハワイの歴史や文化、習慣、時代の流れを垣間見る事が出来るんです。
さて、
花のように見える部分は園芸専門用語で「包葉」と言い、花芽や蕾、花を包み込むようになる特殊な形をした葉っぱの事を言いますよ。
では実際の花は?と言うと「種状花序」と言い、真ん中のスティックのような部分に実は何百と言う小さな花たち集合体のように咲いているんです。
スパティフィラムなどもこれと同じです。
もっと身近で分かり易い花を例に挙げると「紫陽花」の花もそうで、花のように見える部分は花では無く、包葉や萼で出来ています。
派手に見せ掛けて虫や動物たちに蜜を運んで貰い、繁殖を促す為の植物の生きる工夫でもあります。
アンスリウムの花、
ハワイで見掛けたら是非、色々な品種を写真に納めて見て下さいね。
ハワイアンキルトでも、とても人気の有るモチーフなんです。
植物としては里芋科の仲間ですがハワイアン達のソウルフードで有るタロイモのハワイ神話のように、一つの苗から何百、何千と言う苗が生まれて行った事からキルターにとってはアンスリウムは神聖な植物でもあります。
然し、肝心のローカル、ハワイアンにとってはそんなアンスリウムの花もただのお化けに見えてしまうところがおおらかで、ユニークでもあり面白いですね。
(笑)
画像は「Ozaki Red」です。
今回のハワイアン・フォト&エッセイでは、ハワイのアンスリウムの花のコラムをお届けしました。
それではまた、See you!